長く厳しい冬が続く北欧では、自然や植物への想いがとても深く、人々の暮らしの中に「お花」が特別な意味を持って存在しています。
春の訪れとともに咲く花は、寒さの先にある希望やよろこびの象徴。リビングや窓辺に飾られる小さな花々には、「今日を大切に生きる」そんな想いが込められています。
特別な日だけでなく、日常の中でさりげなくお花を飾るのが北欧流。マーケットで買った季節の花や、庭に咲いた野の花をガラスの花瓶にそっと挿して、暮らしの一角を彩ります。
それは決して派手ではないけれど、心がふっとやわらぐような、あたたかい光景です。
自然を尊び、身のまわりのものを丁寧に選ぶ北欧の人々にとって、花は「装飾」ではなく、「心の豊かさ」の象徴。
花のある暮らしは、シンプルで静かな時間を大切にする北欧のライフスタイルそのものとも言えます。
北欧の冬は長く、暗くて寒い日が続きます。
だからこそ、春の訪れとともに咲く花々は、人々にとって希望や喜びの象徴。
チューリップ、スノードロップ、リラの花など、季節のはじまりを告げる花が、日常に彩りをもたらしてくれます。
スウェーデンでは6月に「ミッドサマー(夏至祭)」という大切な行事があります。
一年でもっとも日が長くなるこの日、人々は野に咲く花を集めて花冠(フラワークラウン)を作り、歌い、踊り、自然の恵みに感謝を捧げます。
大人も子どもも一緒になって作る花冠は、手仕事と自然の時間を楽しむ北欧らしい文化のひとつです。
北欧の暮らしでは、お花は特別な装飾ではなく、心を整えるための身近な存在です。
たとえばマーケットで買った季節の花を、小さなガラス瓶に一輪だけ活けて、窓辺やテーブルに飾る——そんなふうに花を楽しむことが日常に根づいています。
デンマークには「リュッケ(lykke)」という言葉があります。
これは「幸せ」や「心満たされる感覚」を意味し、豪華なものではなく、日常の中の小さなよろこびを大切にする考え方です。
お気に入りのカップでコーヒーを飲みながら、さりげない花を眺めるひととき——それこそが、北欧のリュッケなのです。